眼鏡をはじめてかけたときのこと。

葉脈が見えた。靴ひもを形成する無数の糸が見えた。
マンホールの蓋の塗料がところどころはがれているのが見えた。
ありとあらゆるものに明瞭な輪郭があり、強烈な色彩があった。
自分がどれほどうすらぼんやりの世界の生きていたのか、
眼鏡をかけてはじめて分かった。




最近、わたしはまた眼鏡を手に入れた。
わたしはそれまで影絵の世界にいきていた。